管理番号:
PB011996

書誌情報

論文名:
Leisure-time exercise, physical activity during work and commuting, and risk of metabolic syndrome. / 余暇運動、仕事中および通勤時の身体活動とメタボリックシンドローム発症の関係
著者:
Kuwahara K, Honda T, Nakagawa T, Yamamoto S, Akter S, Hayashi T, Mizoue T
雑誌名:
Endocrine
発行年:
2016
巻:
53
号:
3
頁:
710-721

対象

ヒト:
対象
一般健常者
性別
男女混合
年齢

30~64

対象数
10000以上
動物:
対象
空白
対象数
10未満
地域:
地域1
国内

研究の種類・調査の方法

研究の種類:
種類1 (横断・縦断)
縦断研究
種類2 (介入・コホート)
コホート研究
種類3 (前向き・後向き)
後向き研究
調査の方法:
方法
質問紙
方法 (その他)
実測

アウトカム

予防:
予防 (高血圧症・心疾患・脳血管障害)
な し
予防 (高脂血症・糖尿病・肥満)
な し
予防 (がん)
な し
予防 (転倒・骨折・介護)
な し
予防
メタボリックシンドローム予防
維持・改善:
維持・改善 (体力・廃用性萎縮)
な し
維持・改善 (糖質代謝・脂質代謝・タンパク質代謝・骨代謝)
な し
維持・改善 (ADL・QOL)
な し
維持・改善 (心理的指標)
な し

図表

図表掲載箇所:
P716 図1、図2

概要・結論

概要:

【背景】 身体活動はメタボリックシンドロームに対して予防的に関わることは知られているが、身体活動量との量-反応関係や身体活動の強度の影響、仕事や通勤といった余暇以外の身体活動とメタボリックシンドローム発症との関係についてはよくわかっていない。本研究では我が国の労働者を対象として、定期健康診断データを用いてメタボリックシンドローム発症リスクと余暇運動量との量-反応関係、余暇における運動量別の運動強度、仕事中および通勤時の身体活動との関連について検討を行っている。 【方法】 本研究はJapan Epidemiology Collaboration on Occupational Health (J-ECOH) Studyの参加施設のうち、身体活動について詳しい情報を定期健康診断時に把握している1社を対象としている。対象者はベースライン(2008年度)に健診を受診した、メタボリックシンドロームや循環器疾患、がんに罹っていない22,383名(うち、女性3421名)の労働者である。追跡は最長で2014年3月まで行った。身体活動は自己申告に基づく調査票によって評価している。余暇運動は20項目の活動から最大3項目まで選択し、その実施時間と頻度を評価した。さらに、運動強度の影響を検証するために、運動強度(3-≦6メッツ、>6メッツ)および週当たり運動量(0メッツ時、>0-<7.5メッツ時、7.5-<16.5メッツ時、≧16.5メッツ時)の組み合わせに基づき、対象者を分類した。仕事中の身体活動は、作業形態に関する1つの質問(選択肢:座位、立位、歩行、かなり動く作業)から評価した。通勤活動として往復の通勤徒歩時間を評価し、<20分、20-≦40分、≧40分の3群に対象者を分類した。メタボリックシンドロームの有無は2009年に発表されたJoint Interim Statementによる診断基準に基づき判定した。メタボリックシンドローム発症のハザード比(95%信頼区間)はCox比例ハザードモデルを用いて算出した。 【結果】 平均4.1年の追跡期間中に、5,361名がメタボリックシンドロームを発症した。余暇運動量が多いほど、メタボリックシンドローム発症リスクは低下した。この関連は生活習慣や仕事要因、Body mass indexなどを調整しても変わらなかった(傾向性P値=0.004)。対象者を余暇運動量と運動強度別に分けてメタボリックシンドローム発症リスクを見ると、中強度のみの余暇運動を実施していた者ではメタボリックシンドローム発症リスクの低下は認められなかった。一方、高強度のみあるいは高強度と中強度を組み合わせた余暇運動を行っていた者ではメタボリックシンドローム発症リスクの低下を認めた。運動を行っていなかった者と比べ、高強度の運動のみを行っていた者におけるメタボリックシンドローム発症のハザード比(95%信頼区間)は、週7.5メッツ時未満の運動量では0.93(0.75, 1.14)、週7.5メッツ時以上16.5メッツ時未満の運動量では0.81 (0.64, 1.02)、週16.5メッツ時以上の運動量では0.84(0.66, 1.06)であり、中強度および高強度の運動を実施していた群ではそれぞれ0.90(0.70, 1.17)、0.74(0.62, 0.89)、0.81(0.69, 0.96)であった。仕事中の身体活動が高いほど、メタボリックシンドローム発症リスクは低下する傾向を認めたが(傾向性P値=0.039)、そのリスクの低下はわずかであった。通勤徒歩時間はメタボリックシンドロームと明確な関連を示さなかった。

結論:

余暇運動量が多いほど、メタボリックシンドローム発症リスクは低下する傾向を認めたが、リスクの低下は高強度のみあるいは中強度と高強度の運動の両方を行っていた者のみで認められた。座りがちな仕事を行う者と比べ、仕事中に体を動かす者ではわずかであるがメタボリックシンドローム発症リスクが低下していた。通勤徒歩時間はメタボリックシンドローム発症リスクと関連しなかった。

エキスパートによるコメント:

本研究は仕事や通勤活動とメタボリックシンドローム発症との関連について世界ではじめて報告したものであり、運動量や運動強度とメタボリックシンドローム発症との関連を検証した数少ない研究の一つである。本研究の対象者は日本の大企業の労働者であり、業種も限られているため、中小企業などへの結果の一般化は慎重に行う必要がある。また、男性が主体の集団であったため、今後、女性が多い企業での検討が必要である。

担当者:

桑原恵介