管理番号:
PB010001

書誌情報

論文名:
Aerobic fitness reduces brain tissue loss in aging humans. / 有酸素性能力は加齢によるヒトでの脳組織喪失を抑制する 
著者:
Colcombe SJ, Erickson KI, Raz N, Webb AG, Cohen NJ, McAuley E, Kramer AF.
雑誌名:
J Gerontol A Biol Sci Med Sci.
発行年:
2003
巻:
58
号:
頁:
176-180

対象

ヒト:
対象
一般健常者
性別
男女混合
年齢

66.5±5.3

対象数
10~50
地域:
地域1
欧米

研究の種類・調査の方法

研究の種類:
種類1 (横断・縦断)
横断研究
種類2 (介入・コホート)
その他
種類3 (前向き・後向き)
その他
調査の方法:
方法
実測

アウトカム

予防:
予防 (高血圧症・心疾患・脳血管障害)
な し
予防 (高脂血症・糖尿病・肥満)
な し
予防 (がん)
な し
予防 (転倒・骨折・介護)
介護予防
維持・改善:
維持・改善 (体力・廃用性萎縮)
な し
維持・改善 (糖質代謝・脂質代謝・タンパク質代謝・骨代謝)
な し
維持・改善 (ADL・QOL)
QOL改善
維持・改善 (心理的指標)
な し

図表

図表1:
図表2:
図表掲載箇所:
P177, 表1; P178, 図1

概要・結論

概要:

ヒトは30代初め頃から加齢とともに脳の萎縮が始まる。近年、有酸素性の運動が中枢神経系の健康にも効果的であることが動物実験により示されている。しかしながら、有酸素性能力がヒトの脳構造に及ぼす効果はこれまで体系的に検討されていない。方法:対象者は、右利きで脳機能の正常な地域在住の55歳以上成人(55.6%が女性)を用いた。高解像度脳MRI画像を撮影し、voxel based morphometric (VBM) technique を用いて次の3点を検討した。1.脳組織の加齢による変化、2.脳組織の有酸素性能力による変化、3.有酸素性能力が加齢による脳組織の変化に及ぼす影響。結果:前頭前野、上頭頂葉、中/下側頭皮質において、加齢による灰白質の減少が認められた(z= 3.25-6.30)。また加齢に伴い、前部の白質が後部および側頭領域よりも大きく減少していた。加齢によって強く影響を受けた領域は、有酸素能力により大きく改善されていた(前頭前野、上頭頂葉、側頭皮質; z= 3.25-6.10)。また、有酸素能力により前部および前頭葉-後頭頂小葉を結ぶ経路の白質に改善がみられた。有酸素性能力自体による脳組織への影響は認められなかったことから、加齢による組織の減少を抑制する役割において有酸素性能力の効果が認められる。

結論:

高い有酸素性能力は加齢に伴う脳の萎縮を抑制した。このことから、有酸素運動は、心血管系の健康のみならず、脳の健康にも同様に効果的である可能性が示された。

エキスパートによるコメント:

運動が脳の機能維持に効果的であることを脳構造からも示したことでより確実なものとなった。その意味で、本研究の意義は大きい。

担当者:

藤本敏彦