管理番号:
PB010397

書誌情報

論文名:
Sarcopenia in premenopausal and postmenopausal women with osteopenia, osteoporosis and normal bone mineral density. / 骨減少症、骨粗鬆症および正常骨ミネラル密度を伴う閉経前および閉経後の女性でのサルコペニア 
著者:
Walsh MC, Hunter GR, Livingstone MB.
雑誌名:
Osteoporosis Int.
発行年:
2006
巻:
17
号:
1
頁:
61-7

対象

ヒト:
対象
一般健常者
性別
女性
年齢

17歳~77歳

対象数
100~500
地域:
地域1
欧米
地域2
米国

研究の種類・調査の方法

研究の種類:
種類1 (横断・縦断)
横断研究
種類2 (介入・コホート)
コホート研究
種類3 (前向き・後向き)
後向き研究
調査の方法:
方法
実測

介入の方法

介入の方法:

アウトカム

予防:
予防 (高血圧症・心疾患・脳血管障害)
な し
予防 (高脂血症・糖尿病・肥満)
な し
予防 (がん)
な し
予防 (転倒・骨折・介護)
転倒・骨折予防
予防
骨粗鬆症
予防
サルコペニア
維持・改善:
維持・改善 (体力・廃用性萎縮)
な し
維持・改善 (糖質代謝・脂質代謝・タンパク質代謝・骨代謝)
な し
維持・改善 (ADL・QOL)
な し
維持・改善 (心理的指標)
な し

図表

図表1:
図表掲載箇所:
P64, 図1

概要・結論

概要:

サルコペニアとは,加齢よる筋肉量および筋力の低下のことをいい、歩行や運動機能の障害とそれに関連する転倒の原因となり、骨折のリスクを高める。本研究は、幅広い年齢層(17歳~77歳)の健常女性131名を対象に、オステオペニア(骨減弱:骨粗鬆症まで至らないが、骨密度が正常より低い)ならびに骨粗鬆症の女性のサルコペニア罹患率を調査すると共に、サルコペニアの予防に関連する因子を探究した。体脂肪率や筋肉量、骨密度は、高い測定の信頼性のあるDXA(デキサ)法で測定した。個々人の筋肉量を比較できるように身長当たりの骨格筋量(相対骨格筋指数:四肢の筋肉量を身長の二乗で割ったもの)を評価した。オステオペニアと骨粗鬆症は、骨密度の値を基準に評価した。栄養摂取状況は、3日間の食事記録により評価し、身体活動量は、質問紙法を用い仕事、スポーツ、レジャーの実施状況より評価した。結果として、閉経後の女性は、閉経前の若い女性よりも体脂肪率が高く、骨密度が低かった。加齢に伴いサルコペニアと骨粗鬆症、オステオペニアの罹患率が高くなっていた(図1を参照)。閉経前の女性でオステオペニアの者は、12.5%がサルコペニアと判定された。閉経後でオステオペニアである女性では25%、骨訴訟症である者は50%がサルコペニアと判定された。ホルモン補充療法(更年期障害の治療法であり、骨粗鬆症の予防にも有効とされる)を行っている女性では、行っていない者に比べ骨密度が高く、オステオペニアと骨粗鬆症の罹患率が低いことが分かった。しかし、ホルモン補充療法を行っていても行っていなくとも、サルコペニアの罹患率(約20%)に変わりはなく、相対骨格筋指数にも差がなかったので、この治療によるサルコペニアの予防効果はみられなかった。身体活動量は、相対骨格筋指数と骨密度の高さの両方と関連することが認められた。

結論:

サルコペニアは加齢に伴い進行し、骨密度の低下(オステオペニックや骨粗鬆症)とも関連していることが明らかとなり、(転倒などによる)骨折のリスクを高める要因であることが考えられた。また、サルコペニアと骨粗鬆症のリスクは、身体活動と密接に関連していることが考えられた。DXA法によるサルコペニアと骨粗鬆症の診断は、運動トレーニング(特に筋力トレーニング)の介入を必要とる者の判別にも有効であると考えられた。

エキスパートによるコメント:

本研究は、対象者数が十分でないことや、測定法の限界などが考えられるため、実際の応用には注意を要するが、日常身体活動が、加齢に伴うサルコペニアならびに骨粗鬆症の予防に重要であることを示す貴重な研究である。また、サルコペニアの程度を評価する国際基準の確立の必要性も指摘されている。

担当者:

熊原秀晃