書誌情報
対象
研究の種類・調査の方法
介入の方法
アウトカム
図表
概要・結論
本研究は地域における既存の保健事業(健康診査および事後指導)を活用して,中高年者の生活習慣病予防対策に適用可能な運動行動に関するセルフモニタリングの有用性を明らかにするため,実用性と有効性を検討することを目的とした。東京都A市の65歳以下でBMI24.2以上の市民健康診査受診者45名を研究対象者とした。集計期間は2002年11月から2003年4月の5ヶ月間(154日)であった。介入期間中のセルフモニタリングは,日歩数および運動プログラムの実施状況を健康生活ダイアリー(A4版,毎月1枚)に記入した。実用性は介入期間中のセルフモニタリング提出率,記入率および運動実施状況の推移から評価した。有効性は介入前後のBMI,3分間歩行距離,消費エネルギー,運動行動エフィカシーおよび行動変容ステージの変化から評価した。さらに,記録内容から介入による消費エネルギー量を推定し,介入効果との関連性を検討した結果、提出率は99.6%,記入率は95%であった。目標運動単位数,日歩数,介入消費量は介入期間中に有意に増加した。BMI,3分間歩行距離,消費エネルギー,運動行動セルフエフィカシーおよび行動変容ステージは介入前後で有意に改善した。セルフモニタリングの継続実施群は非継続群よりも有意に歩数が増加した。準備期では継続実施群の行動変容ステージが有意に進行した。介入効果に対する介入消費量の寄与率は,BMI変化量の27.3%,消費エネルギー変化量の20.1%とそれぞれ推定された。
セルフモニタリングは実用性が高く、行動変容を促進し,習慣化に寄与しうる。また、セルフモニタリング記録から推定した介入消費量は介入効果の予測因子として利用可能である。
運動習慣を形成し、継続するための運動行動のセルフモニタリング手法の実用性と有効性を明らかにした研究である。運動行動のセルフモニタリングの実用性が高いことが実証されているが、有効性については対照群との比較が必要である。また、この方法は運動行動のみならず健康増進を目的とした地域保健事業参加者以外へも適用が可能と考えられ、他の集団に適用したときの実用性と有効性の検証が必要がある。
江川賢一