管理番号:
PB011349

書誌情報

論文名:
Effects of continuous versus accumulated activity patterns on postprandial triacylglycerol concentrations in obese men. / 肥満男性における食後のトリグリセロール濃度に与える、「継続的」対「蓄積的」活動パターンの影響  
著者:
Miyashita M.
雑誌名:
Int. J. Obes.
発行年:
2008
巻:
32
号:
8
頁:
1271-1278

対象

ヒト:
対象
一般健常者
性別
男性
年齢

26.5±1.5

対象数
10未満
地域:
地域1
国内

研究の種類・調査の方法

研究の種類:
種類1 (横断・縦断)
縦断研究
種類2 (介入・コホート)
介入研究
種類3 (前向き・後向き)
生理学的研究
調査の方法:
方法
実測

介入の方法

介入の方法:
運動様式
自転車漕ぎ運動
運動強度
最大心拍数の60%の強度
運動時間
計30分
運動期間
急性
その他
一過性運動(30分×1回)と分散運動(3分×10回)の比較

アウトカム

予防:
予防 (高血圧症・心疾患・脳血管障害)
心疾患
予防 (高脂血症・糖尿病・肥満)
高脂血症
予防 (がん)
予防 (転倒・骨折・介護)
予防
中性脂肪
維持・改善:
維持・改善 (体力・廃用性萎縮)
維持・改善 (糖質代謝・脂質代謝・タンパク質代謝・骨代謝)
脂質代謝
維持・改善 (ADL・QOL)
維持・改善 (心理的指標)

図表

図表1:
図表掲載箇所:
P1274, 図1

概要・結論

概要:

一過性有酸素運動は食後の中性脂肪濃度の上昇を抑制させ, 生活習慣病の予防という観点から有効な介入方法である. また, 分散運動(一回あたり短時間の運動を累積する)も食後中性脂肪濃度の上昇抑制に効果的であるという報告がある. しかし, 先行研究では活動的な健常者を対象として検討していたため, 運動における食後中性脂肪濃度上昇の抑制効果を一般に当てはめることは難しいと考えられる. また, 肥満者を対象に1回あたりの運動時間を10分以下とし, 一日を通し運動させ食後中性脂肪濃度の変化を検討した報告はない. 活動的でない, 心臓脳血管疾患の危険因子を有する者を対象に検討することは学術的のみならず, 実用的にも役立てられる応用・発展が期待され, 生活習慣病予防策として貢献し得ると考えられる. 従って, 本研究は男性の肥満者を対象に中強度の3分10回の自転車漕ぎ運動及び30分1回の自転車漕ぎ運動が食後中性脂肪濃度に及ぼす影響を検討することを目的とした. 活動的でない肥満男性8名は一試行が連続した2日工程の実験に3回参加した(分散運動試行, 一過性運動試行, 安静試行). 実験1日目, 安静試行では被験者は運動を行わず安静を保ち, 運動試行では最大心拍数の60%の強度で自転車漕ぎ運動を3分, 1日を通し10回(30分の休憩をはさみながら), または30分1回の自転車漕ぎ運動を行った. 各試行とも実験2日目, 被験者は前日夜からの絶食の後, 試験食として中脂肪食(脂質35%, 糖質52%, タンパク質13%)を朝食に取り, その後6時間の中性脂肪の変化を観察した. 食後の血清中性脂肪濃度は安静試行と比較し, 分散運動試行及び一過性運動試行で有意に低値を示した(図1参照). 本研究は現在の身体活動指針を支持し, 更に一回あたり短時間の運動の累積は少なくとも高脂血症予防という点では, 健康の保持・増進に有益であるとまとめている.

結論:

男性の肥満者において, 一回3分の自転車漕ぎ運動を1日通し10回行った分散運動は, 同等の運動量でおこなった30分連続の自転車漕ぎ運動と同程度, 食後血清中性脂肪濃度を低減させることを明らかにした. 生活習慣病予防のための身体活動指針に対し, 本研究の結果から食後高脂血症の予防という観点から考えると, 十分なエネルギーを消費する運動であれば1回の運動時間は問題ではないと推察される.

エキスパートによるコメント:

毎日30分以上運動をする人でさえ1回の運動時間10分を超えて運動をしていないため, 日常生活で短時間の運動を累積し, 1日の身体活動水準を高めることが心臓脳血管疾患の予防に有効的な介入法であることを示唆するものである. 今後, 更に本研究の結果が女性や高齢者など, 幅広い対象群で同様の結果が得られるか検討する必要があると考えられる.

担当者:

宮下政司