管理番号:
PB012476

書誌情報

論文名:
Community-level sports group participation and the risk of cognitive impairment. /地域における高齢者のスポーツグループ参加割合と認知機能低下リスクの関連
著者:
Tsuji T, Kanamori S, Miyaguni Y, Hanazato M, Kondo K
雑誌名:
Med Sci Sports Exerc
発行年:
2019
巻:
51
号:
11
頁:
2217-2223

対象

ヒト:
対象
一般健常者
性別
男女混合
対象数
10000以上
地域:
地域1
国内

研究の種類・調査の方法

研究の種類:
種類1 (横断・縦断)
縦断研究
種類3 (前向き・後向き)
前向き研究
調査の方法:
方法
質問紙

アウトカム

予防:
予防 (高血圧症・心疾患・脳血管障害)
な し
予防 (高脂血症・糖尿病・肥満)
な し
予防 (がん)
な し
予防 (転倒・骨折・介護)
介護予防
予防
認知機能低下予防
維持・改善:
維持・改善 (体力・廃用性萎縮)
な し
維持・改善 (糖質代謝・脂質代謝・タンパク質代謝・骨代謝)
な し
維持・改善 (ADL・QOL)
な し
維持・改善 (心理的指標)
な し

図表

図表1:
図表掲載箇所:
(JAGES Press Release NO: 182-19-16) https://www.jages.net/library/pressrelease/?action=cabinet_action_main_download&block_id=2652&room_id=549&cabinet_id=174&file_id=7570&upload_id=9166

概要・結論

概要:

多くの人が活発に社会参加している地域では、人のつながりや信頼関係が豊かになり、その人が参加しているか否かを問わず健康度が高くなる可能性がある。私たちのこれまでの研究からも、運動やスポーツのグループに参加する高齢者が多い地域では、自身の参加状況に関わらず“うつ”のリスクが低いことを明らかにした。うつは認知症を引き起こす主要なリスク因子である。そこで本研究では、地域の運動・スポーツグループへの参加割合と、その地域に暮らす高齢者の認知症リスクとの関連性を検証した。方法: 2010~12年に日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study: JAGES)が実施した調査を起点に、その後6年間の認知機能低下の状況を追跡できた高齢者40,308人(7道県・16市町村)を分析対象とした。346の地域(およそ小・中学校区)ごとに、運動・スポーツグループに月1回以上参加している者の割合を集計し、その地域に暮らす高齢者の認知機能低下との関連を調べた。自身が運動グループに参加しているか否か、年齢、性、疾患(脳卒中、高血圧、糖尿病、聴覚障害)、肥満、社会的孤立、飲酒、喫煙、教育歴、所得、人口密度、日照時間の要因の影響を統計学的に調整した。結果: 約6年間の追跡期間中に9.8%(3,940人)に認知機能低下が確認された。運動・スポーツグループの参加割合は平均で25.2%であり、0.0%~56.5%の地域差が認められた。参加割合が10%ポイント増えたと仮定すると、その地域に暮らす高齢者全体の認知機能低下のリスクが8%低くなる結果が確認された。これは、個人の参加状況の影響を差し引いた結果であり、すなわち、参加者が多い地域ではたとえ参加していない人でも、認知症リスク低下の恩恵を受ける可能性がある。また、毎日の歩行時間が30分増えるごとに認知症リスクは約12%低下することが確認された。上述した「8%」のリスク低下は、その地域の高齢者全員が毎日20分多く歩くことに匹敵するだけの認知症予防効果がもたらされる計算となる。

結論:

高齢者の運動・スポーツグループへの参加割合が高い地域に暮らす高齢者は、自身が参加しているか否かに関わらず、そこに暮らしているだけで認知症のリスクが抑制されることが示された。

エキスパートによるコメント:

地域に高齢者が参加できる運動やスポーツのグループを増やすことは、その参加者のみならず、その地域の高齢者全体の認知症予防に有益である可能性が示された。そのような地域では、意識的・無意識的に健康的な行動が伝染したり、健康に良い環境や施設が整えられていたりすることなどが、その理由として考えられる。

担当者:

辻大士